よくある分析上の勘違い、正しい示唆を得るためのポイント
「問題」と「特徴」をはきちがえない
調査結果の分析で重要なことは何でしょうか?
最も大事なことは「結果から見えるものが、「特徴」なのか「問題」なのかを分別すること」だと私たちは考えています。
調査実施後、会社として又は経営・企画側として結果をきちんと解釈し報告することが必要になります。
結果の捉え方については、設問やその背景も踏まえて慎重な解釈が求められます。
例えば、ある設問に対しての結果数値(平均値等)が高い部署と低い部署があったときに、その数値を元に良い悪いの判断ができるのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。
例えば、一方の部署は成長市場の中で市場の伸びと同じカーブで成長中、一方は成熟した市場を相手にした部署で構成員もベテランを厚く配置しているとした場合、どう解釈すればよいでしょうか。
結果から見えるものが、「特徴」なのか「問題」なのかを分別することは容易ではありません。
「特徴」というのは、職種、事業環境、メンバー構成、位置づけを考えると、当然そうなるだろうといった結果のことです。
一方、「問題」とは、「本来こうあるべきだが、そうなっていない」ということです。
背景をきちんと踏まえて解釈をしなければ、誤解を与えたり、結果自体が構成員のモチベーションを下げてしまうことにもなりかねません。
私たちがいつも頭を悩ませるのはこの部分です。
仮説に基づいた適切な分析と、結果の見方に関する経験が活きてくる部分です。
結果を解釈するためのベンチマークの重要性
次は、この種の調査が構造的に持っている落とし穴について補足します。
まず実例から見てみましょう。
ある会社で調査を実施したところ次のような2つの質問で結果が出たとします(質問は5件法で点数化し平均値を算出)
- ①仕事上のコミュニケーションは円滑である(コミュニケーション)
- ②顧客の立場を優先した判断がいつもなされている(顧客志向)
この結果から、回答の割合もしくは平均値を見てどう解釈されますか?
例えば、
「職場のコミュニケーションは良好そうだが、顧客志向が弱いな」
と判断したとします。
果たしてこの解釈は正しいでしょうか?
答は、「必ずしもそうとは言えません」 です。
ベンチマークと比べてみなければ、「質問の文言や表現」に左右されて正しい示唆を得ることが困難です。
世の中の企業で、①と同じ聞き方をしたときの平均点が「4.2」、②の平均点が「2.5」だった場合、解釈は逆になります。
表現や文言により回答水準に差が出てきます。
全ての設問を平均点3.0等に調整することは実質不可能です。
ですので、正しい解釈を行なうためにはベンチマークが欠かせません。
まれに、社内で実施した調査報告書を見ると、設問ごとにネガティブな回答割合が高い順に並べてリストにしたアウトプットを見かけることがあります。
ですが、ここから本当の課題は必ずしも見えてこないのです。